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犬を飼うまえに

 あらゆる犬種には用途があり、使役目的に由来する性質や能力を持っています。見た目の好みだけで犬種を選ぶと失敗します。犬種のキャラクターが自分のライフスタイルに合うか?なのですが、飼育環境や条件が不十分な場合、まったく健全な仔犬であっても、問題が起こる可能性はあります。問題行動とは、犬にとって極めて自然な行動であっても、人間にとって不都合な行動のことを言います。
 里親募集サイトを見ると、仔犬を飼い始めてあまり日数が経たないうちに、アレルギー、引っ越し、家族や本人の怪我や病気、思っていた以上に仔犬を育てるのが大変だった・・・などと人間の勝手で多くの犬が手放されます。
 手入れや運動量など、犬に必要な時間・労力を割けるかどうか?充分に考えリサーチしてください。費用も犬のサイズが大きくなるほど、食事、医療、美容、宿泊すべてにおいて小型犬より掛かります。犬との移動に公共交通機関が使えません。
運動の必要がない犬種はありませんが、シベリアンハスキーは、走る欲求を強く持っています。散歩と運動はイコールではありません。人間の歩調に合わせてゆっくり歩くだけでは不十分で、トロット&ギャロップで思う存分に走りエネルギーを発散させることが必要です。とりわけ生後半年から2歳くらいまでの充実した運動が、正しい筋肉と骨格構成を作り、メンタルやしつけに於いても極めて重要です。

犬は誰が飼っても同じ犬になる訳ではありません。良い犬に育てるためには知識も時間も努力も必要になります。素質の良い犬が、間違った飼育管理によって構成や体形までダメになったり、しつけに失敗して扱いに困る問題犬になることは、ごく普通に起こります。せっかく思い描いていた愛犬との楽しい生活が、苦痛になると犬も人も不幸です。犬との生活は10年以上続きますので、写真や映像のハスキーしか知らずに飼いたいと思った人は、ハスキーの飼育者にリサーチしたり、ドッグショー会場に足を運んで質問することをお勧めします。

 ハスキーは初心者向けの犬種ではないと言われます。これは今までオートマ車しか乗ったことがない人が、急にマニュアル車に乗り換えた感じかも知れません。私自身は最初のハスキーを飼うまでに30年間日本犬に携わってました。そのため全く難しいとは思わず、『ハスキーとはなんと手が掛からず楽な犬種なんだろうか、癖がなさすぎて面白くない』と思ったくらいです。もちろん仔犬は1頭ごとに違いがあります。大人しい犬もやんちゃな犬もいて様々です。私は飼い主の力量が試されるような、日本犬の際立った個性が好きでした。そして日本犬(甲斐犬)が、飼い辛いと思ったこともありません。

 長い年月 訓練士や獣医師をしてきた人の多くが、扱いにくく荒っぽいハスキーを経験していますが、この理由は何なのか、現場を知らない身にはわかりませんが、ハスキーが流行犬種だったので、好ましくない性質の犬が量産された時期があったか、見た目だけに飛びついたオーナーが、扱いきれずに持て余したのか?おそらくその両方が理由だと思います。
 一般に頭が良く作業意欲の高い犬種は、飼い主が犬をコントロールする能力が不足する場合、かえって扱いが難しくなります。両親の知能や性質は、外見以上に子供に遺伝しますので、仔犬選びの際、出来る限り仔犬の両親を見て検討して頂ければと思います。

遺伝性の欠陥がまったくない犬種は存在しませんが、シベリアン ハスキーのような幸運に恵まれた犬種はほとんどありません。個々の犬は一般的に健康で気質が良いだけでなく、長年にわたって遺伝的問題が多発することはありませんでした。シベリアン ハスキー クラブ オブ アメリカ (SHCA) が、潜在的な遺伝的問題として最も注意を促している健康問題に、股関節形成不全と遺伝性眼疾患があります。
 1994年1月から1998年12月までの間に、OFAによって股関節形成不全の評価を受けた12,087頭のシベリアンハスキーのうち、30.5%の犬が「エクセレント」の評価を受けており、異形成はわずか2.2%でした。
 1999年に米国獣医眼科学会が報告した統計では、調査した1345匹のシベリアンハスキーのうち、合計107匹の犬が遺伝性白内障(8%)、合計44匹の犬が角膜ジストロフィー(3%)、4匹の犬が進行性網膜萎縮症(1%未満)でした。
 この統計は、健康問題を持つ繁殖を避けたいと願う倫理的なブリーダーが、彼らの繁殖犬の検査をしたのが母集団であることに留意してください。健康問題に注意を払わなかったり、知識を持たない営利的な繁殖者を加えると、これらの数値は、有意に増えるはずです。
 現在は淘汰されほとんど心配無いと思いますが、かつてハスキーにはてんかんが多くみられました。てんかんの原因特定は困難ですが、遺伝要因があるのは明らかと思われます。他に発症の報告がある疾病に糖尿病やアロペシアXがあります。
 当方の在舎犬すべては、JAHDの股関節・膝蓋骨評価の診断を受け、国内唯一のOFA認定医による眼の検査をクリアしています。Enbark の遺伝子検査では、変性性脊髄症、DM (SOD1A)、GM1ガングリオシドーシス、てんかん、若年性網膜萎縮など190以上の遺伝疾患すべてでクリアしています。、